夫婦関係がうまくいかなくなる場合、離婚を前提にして別居を始めるケースもあれば、とりあえず別々に暮らして様子を見るケースもあります。時間を置いたらお互いの仲を修復できたり、頭を冷やして別れる決断をできることもあります。
別居期間中に不用意な行動や発言をしてしまうと、それが原因で離婚の際に不利に働いてしまう危険があります。たとえば、慰謝料を多く取られたり、反対に受け取る金額が少なくなったり、あるいは相手が応じない場合に別れられないケースも出てきます。
どうしても別居を思い立つ時には感情的になってしまいがちなので、その後の離婚に向けて不利に働くことが少なくありません。本来なら申し出た側が必ずしも不利な立場に陥るわけではないものの、リスクを知らないために立場を危うくしてしまいがちです。
そのため、離婚を考えている方も、そうでない方も別居に際して押さえておきたいポイントについて解説しておきます。
離婚で不利に働く要素
一方的に家を出てしまうと、悪意の遺棄に該当する可能性があります。夫婦には同居して互いに助け合う義務があるのに、勝手に出て行ってしまうと、相手や家庭を捨てたという扱いにされてしまい、これが悪意の遺棄と呼ばれるものです。
そのため、悪意の遺棄が認められてしまうと、慰謝料の支払額が増加したり、受け取れる金額が少なくなったりするのです。離婚の時には決定的な問題になるので、別居する段階で注意しなくてはなりません。
夫婦の中で収入を得ている側が勝手に出て行き、さらに生活費も支払わず、相手方からの同居の求めにも応じない場合には、悪意の遺棄として取り扱われる危険性が高いので、要注意です。
悪意の遺棄として認定されないためにも、理由を明かして別居について話し合う必要があります。双方の同意が取れているのであれば、離婚の際にも不利な材料として取り扱われないためです。
ただし、相手からのDVを避けるために家を出るような場合には悪意の遺棄には該当しないため、離婚の際にも不利に働きませんので、場合によっては同意を得る必要がないと言えます。
別居期間と離婚の可否
夫婦がお互いに同意すれば離婚が円満に成立するものの、相手が応じない場合もあります。このような場合、明確に理由があり、夫婦関係が修復不能と認められれば認められやすくなるものの、そうした事情がない場合には判断が分かれます。
色々な要素を加味して、今後の結婚生活の維持が可能かどうかを判断されるため、別居期間は長い方が離婚が認められやすい傾向にあるものの、法律で一定の期間が規定されているわけではありません。
そのため、同じ別居期間であっても、認められたり、認められなかったりするのです。ただし、同居していた期間よりも長期に及んでいるような場合には、離婚の請求が通る可能性は高くなるでしょう。
期間の長さは事情の一部として考慮されるものの、それだけが絶対的な基準となっているわけではないのです。
別居中で離婚前の不貞行為
すでに夫婦関係が破綻しているとみなされる場合ならまだしも、一時的な冷却期間として捉えられるような場合であれば、たとえ一緒に住んでいなくても、不貞行為は離婚に不利に働きます。
不貞行為とは、夫や妻以外の異性と関係を結ぶことで、簡単に言えば浮気です。相手の不貞行為を理由に離婚するのであれば、たとえ別居中であっても夫婦関係は破綻していないと客観的に伺える状況を維持しておくほうが賢明です。
そのため、不用意に離婚を口走ったりせずに、たとえ同居を解消する場合でも、一端距離を置いて冷静になるといった目的を伝えておいたほうがよいでしょう。そうしないと、相手が別居中に不貞行為に走った場合でも、その前から夫婦として破綻をきたしていたと扱われてしまい、結果的に不利に働きかねないためです。
不貞行為に限った話ではありませんが、たとえ離婚を決意しているとしても、まだ夫婦である以上は法的にも責任を負っているので、感情のおもむくままに行動してしまうと、結果的に損をしてしまうリスクがあります。色々な言い分があるでしょうが、いざトラブルになった場合も想定しておかないとなりません。
離婚の手続き
話し合って夫婦が共に別れることに同意すれば、あとは届けを出すだけで済みます。これがもっとも簡単にできる協議離婚です。しかし、一方に未練が残っていたり、維持になって応じてくれない場合もあります。そんなときには、調停の手続きに移ります。
調停は簡単に言うと、第三者を介しての話し合いになります。夫婦だけでは感情的になってしまうような場合には、調停の場で冷静に話し合った結果、意見や別れた後の条件についても同意がまとまる場合があります。
調停でも話がまとまらない場合には、審判の手続きや訴訟に移ります。別居を始めた時に別れると決意していても、実際に成立するまでには長い道のりが待っている場合もあるのです。話を切り出しても、相手が素直に応じてくれない場合には、慣れない手続きをしなくてはなりません。