夫婦はお互いに助け合わなくてはならないと民法によって定められており、たとえ別居していても扶養義務は存続します。別々に暮らすようになるほどなので、感情的にも色々な思いはあるでしょうが、この義務を無視してしまうと不利益な取り扱いをされる危険性があります。
たとえば、専業主婦の妻を残して夫が出て行き、まったく生活費を渡さないと扶養義務を果たしていないことになり、悪意の遺棄とみなされる可能性があります。こうなってくると、自分が離婚を申し出ても相手が応じないと認められなかったり、反対に自分の意思に関わらず相手からの離婚請求は認められやすくなります。さらに、慰謝料の問題も発生します。
個人としての話し合いで解決するばかりではなく、別居してから離婚に至る過程で裁判所の力を借りる場合もあるので、そうした可能性についても考慮して備えておかなくてはなりません。夫婦の間の問題には感情に深く根ざした部分があるものの、第三者としてはそれについて本当の意味で判断するのは不可能なので、扶養義務をはじめとして、それぞれの立場で責任を果たしているかどうかが鍵になるので、明らかな義務違反があるのは不利に働きます。
夫婦の間での扶養義務は、一方が病気や怪我で助けが必要といった特殊なケースを除けば、お金の面がほとんどです。別居しているのなら、その間の生活費や子供の養育費が主眼となるので、その部分を適正に処理しておかなくてはなりません。特に、夫婦の一方にしか十分な収入がない場合には、もう一方の暮らしが困窮するような事態を招くのは、いざという時に自分のためになりません。
相手方に落ち度があって別居している場合でも、離婚していない以上は夫婦としての関係が持続します。その状態が不満な場合でも、扶養義務を放棄することはできないので、別れるための手続きに早く移るべきでしょう。